かない内科の井上学です。

 

かない内科のHPを訪問してくださり、また多くの活動に注目していただきありがとうございます。

 

ここでは、がん治療認定医の井上が、国内死因トップである「がん」に関してなるべく分かりやすくお伝えしていきます。助手との会話形式のブログで解説していきます。

 

皆さんからのご意見やご希望をお待ちしていますので、遠慮なくいつでもご連絡ください。

 

 

今日のテーマは「がん患者とワクチン──免疫を守るために知っておきたいこと」についてです。

 

 

「先生、最近患者さんから“がん患者でもワクチンを打っていいの？”って質問をよく受けるんです。特にコロナやインフルエンザの時期になると心配される方が多くて…。」

 

 

 

 

「うん、それはとても大事な質問だね。がんの患者さんにとって、感染症の予防はとても重要なんだ。治療で免疫力が落ちている時こそ、ワクチンで守ることが必要になる。」

 

 

 

 

 

「でも、抗がん剤や放射線を受けているときにワクチンを打つと、体に悪影響があるんじゃないかって心配されますよね。」

 

 

 

 

「確かに、免疫の働きが落ちている時期は、ワクチンの効果が十分に出にくいことがある。でも“打ってはいけない”ということではないんだ。ワクチンには大きく分けて『生ワクチン』と『不活化ワクチン』があるけれど、この違いを理解するのが大切なんだ。」

 

 

 

【生ワクチンと不活化ワクチンの違い】

 

 

 

「生ワクチンって、生きたウイルスを弱くして使うタイプですよね？」

 

 

 

 

「その通り。代表的なのは、麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜなど。免疫をしっかりつけられる反面、免疫力が弱っている人にはリスクがある。だからがん治療中や直後の患者さんには基本的に“接種を避ける”んだ。」

 

 

 

 

 

「なるほど。じゃあ、インフルエンザやコロナのワクチンは“不活化”ですよね？」

 

 

 

 

「そう。不活化ワクチンはウイルスを殺してから使うから、感染するリスクはない。だから、抗がん剤や放射線治療中でも、多くの場合“安全に接種できる”んだ。もちろん、主治医と相談してタイミングを調整する必要はあるけどね。」

 

 

 

【タイミングの考え方】

 

 

 

「タイミングって、どのくらい空ければいいんでしょうか？」

 

 

 

 

「一般的には、抗がん剤の投与サイクルの“免疫が回復してくる時期”を狙って打つことが多い。たとえば、白血球の数が戻ってくる治療間隔の中間あたり。がんの種類や薬剤によっても違うから、医師が一人ひとりの状態を見て判断するんだ。」

 

 

 

 

「なるほど。治療中だからこそ、むしろ“守る”意識が大事なんですね。」

 

 

 

【がん患者さんに推奨されるワクチンは？】

 

 

 

「そうだね。がん患者さんに推奨される主なワクチンには、インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹、RSウイルス、そしてコロナワクチンがある。特に肺炎球菌とRSウイルスは、がん患者の肺炎リスクを減らす意味でとても重要なんだ。」

 

 

 

 

 

「帯状疱疹も最近話題ですよね。免疫が下がると出やすいし、痛みも長引くとか。」

 

 

 

 

「そう。新しい“組換え型”の帯状疱疹ワクチン（シングリックス®）は不活化だから、がん患者さんにも接種できる。免疫が落ちている人ほど重症化しやすいから、予防が大切なんだ。当院では全てのワクチンを取り揃えているから、気軽に相談してみてね。」

 

 

 

【ワクチンと免疫療法の関係】

 

 

「最近は免疫チェックポイント阻害薬を使う患者さんも増えていますが、その場合はどうですか？」

 

 

 

 

「いい質問だね。免疫療法中のワクチン接種は慎重に判断が必要だけど、基本的には“不活化ワクチンは安全”とされている。ただし、免疫の反応性が変化することもあるから、接種後は体調変化をよく観察することが大切だね。」

 

 

 

【ワクチンを“我慢する”より“活用する”】

 

 

「がん治療中の患者さんって、“体が弱っているからワクチンはやめておこう”って思いがちですよね。」

 

 

 

 

 

「その気持ちはよくわかる。でも実際は、がんそのものや治療で免疫が落ちるからこそ、感染症への抵抗力を高めておくことが大切なんだ。ワクチンは“がんを治す薬”ではないけれど、“がん治療を支える盾”になる。」

 

 

 

 

 

「“守る治療”っていう考え方ですね。」

 

 

 

 

「そう。がん治療は長期戦になることが多い。だからこそ、感染症に負けない体を整えることが、治療の継続にもつながる。」

 

 

 

【最後に──主治医と相談を】

 

 

 

「今日のお話を聞いて、がんとワクチンの関係ってすごく奥深いなって思いました。結局のところ、何より大事なのは“主治医に相談”することですね。」

 

 

 

 

「その通り。がんの種類、治療内容、体調は人それぞれ。ワクチンの可否やタイミングは一律じゃない。だから、自己判断ではなく、必ず主治医と相談してベストな時期を決めることが大切だよ。“主治医に相談しづらい場合”は、かない内科から紹介状を通じて相談事を代弁することもできるよ。本来、主治医が相談しづらい雰囲気を表出することはあってはならないことだけどね…」

 

 

 

 

「わかりました。これからは患者さんにも“ワクチンで自分を守ることも治療の一部ですよ”って伝えていきたいです。」

 

 

 

 

「いい言葉だね。がん治療は“攻める治療”と“守る治療”の両輪で成り立っている。ワクチンはその“守りの要”なんだ。」

 

 

 

 

【まとめ】

・がん治療中のワクチン接種は、「免疫を守るための治療」

・感染症を防ぐことは、がん治療の継続と生活の質を支える大切な一歩

・不安なときは自己判断せず、必ず主治医に相談し、最適なタイミングで接種を受けましょう。

・“攻める治療”だけでなく、“守る治療”を意識することが、がんと共に生きる力になる

 

 

 

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